鍵が回りにくい、あるいは回らなくなってしまった時、まず試してみたくなるのが潤滑剤の使用です。しかし、潤滑剤なら何でも良いというわけではありません。間違った種類の潤滑剤を使ってしまうと、かえって症状を悪化させてしまう可能性があるため、正しい選び方と使い方を理解しておくことが非常に重要です。鍵穴に使用する潤滑剤として最も適しているのは、「鍵穴専用」と明記された、速乾性のある「パウダースプレータイプ」のものです。これは、潤滑成分である微細なフッ素樹脂などの粉末が、鍵穴内部に付着し、滑りを良くする仕組みです。スプレー後すぐに乾燥するため、ホコリやゴミを吸着しにくく、鍵穴内部をクリーンな状態に保ちやすいというメリットがあります。一方、絶対に避けるべきなのが、CRC5-56のような一般的な浸透潤滑スプレーや、シリコンスプレー、ミシン油、サラダ油といった液体の油です。これらの油は粘度が高く、使用直後は一時的に滑りが良くなったように感じられても、時間とともに鍵穴内部のホコリや金属粉を吸着し、ネバネバとした塊になって固着してしまいます。これが原因で、鍵の動きがさらに悪化し、最悪の場合、完全に回らなくなってしまうこともあります。正しい使い方は、まず鍵穴のノズルを鍵穴にしっかりと差し込み、ごく少量(1秒程度)をスプレーします。スプレーしすぎると、粉末が内部で固まってしまう可能性があるので注意が必要です。その後、鍵を数回抜き差しして、潤滑剤を鍵穴全体に馴染ませます。これで鍵の回転がスムーズになれば応急処置は完了です。もし、潤滑剤を使用しても改善しない場合や、症状が悪化するような場合は、鍵穴内部に別の問題が発生している可能性が高いため、無理せず専門の鍵業者に相談しましょう。